水上村チャッカソン

【水上村チャッカソン Vol.1】地方で企業誘致を目指す一大プロジェクト始動

熊本県の南東端に位置する、美しい大自然に恵まれた水上村。

村民にとっては「山しかない、森しかない」のどかな水上村でも、訪れた人々の心を惹きつける”本当の空気と水”がそこにはあります。

九州中央山地の懐に抱かれた田舎の隠れ里・水上村で「企業誘致を実現させる」という壮大なプロジェクトが、今、幕を開けようとしています。

水上村をつくる自然と文化

水上村は、面積191K㎡に人口2,126人(令和2年10月末時点)が暮らす熊本県球磨郡にある小さな村です。森林面積が村域面積の92%を占め、見渡す限り広がる山林は「隠れ里」とも呼ばれる所以になっています。

愛される大自然|市房山・市房ダム湖

村民を守るかのように村を囲む緑豊かな”市房山”は、標高1,721mを誇る九州山地南部の主峰です。

樹齢1000年を越えると言われる市房杉

照葉樹林の原生林が未だに残り、その神秘的な空間には幹回り6m以上の市房杉が生命の強さを印象づけるようにそびえ立っています。

球磨川を整備して昭和35年に造られた多目的ダムの”市房ダム湖“は、球磨川南部の洪水調節や農業用水、発電に利用されています。

市房ダムに咲き誇る一万本桜

春にはダムの周囲13.4kmにわたり一万本桜が咲き誇り、鮮やかなピンクの桜のトンネルが誕生します。

まるで、物語の世界にいるような感覚になるほどの水上村を取り巻く絶景。

息をのむ景色の数々に、筆者も思わず無心でカメラのシャッターを切っていました。

水上村の文化の象徴|水上スカイヴィレッジ

2017年に誕生した”水上スカイヴィレッジ“は、標高1,000mの山林の草原につくられた圧巻の眺望でクロスカントリーやトレーニングを行える陸上競技施設です。

水上スカイヴィレッジ|全天候型グラウンド

スポーツの振興、次世代を担うジュニア世代の育成という大事な役割を担う国内有数の施設として多くの指導者やアスリートに注目されています。

適度な標高にあるため夏場でも涼しい環境でトレーニングを行うことができ、定期的に開催される大会やイベントの際には全国各地からたくさんのランナーが集まり盛り上がりを見せています。

水上村が抱える深刻な問題とは

水上村には人々の心を魅了する自然と文化という”宝”があるのです。しかし、水上村の将来は明るいとは言い切れない深刻な問題を抱えていました。

止まらない人口減少

地方において少子高齢化や人口減少が問題となることは珍しくなく、人口2,126人の水上村も例外ではありません。

熊本県球磨市水上村の眺望

水上村の人口は減少傾向をたどり、2060年には950人を下回ることが予想されています。(水上村人口ビジョン令和2年版より参照)

人口減少だけではなく雇用問題も無視することはできません。遠方から水上村に訪れてもらうだけではなく、実際に住んでもらうための具体的な施策が必要なのです。

人口減少に歯止めをかける施策が必要

水上村では「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中で4つの目標を掲げ、人口減少に歯止めをかけるという目標に向けて動いています。

  1. 安定した雇用の創出
  2. 新しい人の流れをつくる
  3. 出生数の増加・子育て環境の充実
  4. 時代にあった地域をつくり、水上村の安心な暮らしを守る

水上村の魅力を広く発信して県内外からの移住定住を促進しつつ、水上村から離れてしまう若年層に対して「水上村をもっと愛してもらい長く住み続けてもらうための取り組み」が必要とされています。

家族や地域の”絆”をより深め、温かい水上村の地域コミュニティを維持するためには何が必要なのか?

「この自然豊かで美しい水上村を守りたい」という共通の意識を持った人々が集まり、壮大なプロジェクトへ向けて歩み出しました。

企業誘致を目指す「水上村Chakkathon〜アイデアソン〜」

水上村の将来を救うべく、村役場・観光協会・教育委員会・地元企業・地域おこし協力隊・IT企業が立ち上がり、課題の解決に結びつく「水上村Chakkathon〜アイデアソン〜」が開催されました。

アイデアに着火する”Chakkathon”の誕生

Chakkathon(チャッカソン)“は、”アイデアソン”から生まれた造語です。

会場の黒板に書かれた水上村Chakkathon

“アイデア”と”マラソン”と組み合わせたアイデアソンは、特定のテーマに対して一定時間で集中してチームごとにアイデアを出し合うというもの。東日本大震災後の復旧・復興活動でIT企業を中心にアイデアソンが開催されてきましたが、現在はジャンル問わず広く普及しています。

Chakkathonという言葉には、このアイデアソンの要素に加え、”アイデアに着火する”、”アイデアに火を付ける”という想いが込められています。多種多様な属性の人が熊本県の隠れ里・水上村に集まり、未来に繋がるアイデアを生み出そうという狙いです。

水上村Chakkathonのテーマとゴール

Chakkathonでは「水上村を観光・スポーツ・ビジネスの拠点にして企業ニーズを満たすためのアイデアを出し合う」という大きなテーマに沿ってグループディスカッション、プレゼンテーションが行われます。

洗練されたアイデアの数々に満足するだけではなく、アイデアを具現化するための”ネクストアクション”まで落とし込み、「水上村で企業誘致を実現する」という壮大なプロジェクトの成功が本当のゴールとなります。

水上村のことを知り尽くす村役場や観光協会、地方創生に取り組むIT企業のアイデアが融合することで、水上村の未来はどう変わっていくのか?

筆者はこのChakkathonに実際に参加して密着取材させてもらうことになりました。

Chakkathonの参加メンバー

水上村石倉交流施設で開催された「水上村Chakkathon〜アイデアソン〜」の参加メンバーをチーム毎にご紹介していきます。

石倉交流施設|水上村

水上村役場・教育委員会・観光協会

村民が快適に暮らせる環境づくりに日々取り組む村役場・教育委員会、そして水上村の観光地域づくりを推進する観光協会からは、以下のメンバーが参加しました。

  • 【産業振興課】川俣課長・田代主幹・江崎参事
  • 【総務課】椎葉さん・那須(恵)参事
  • 【教育課】那須主幹・岩﨑さん
  • 【観光協会】郷さん
  • 【地域おこし協力隊】木村さん

※2020年10月時点での所属となります。

トラックセッション(地元企業)

標高1,000mの陸上競技施設・スカイヴィレッジを管理する「一般社団法人トラックセッション」。水上村の観光客誘致に大きく貢献している地元企業のトラックセッションからはお二方が参加しました。

  • 村上代表・今富さん

MARUKU(IT企業)

熊本県山都町に本社を構えるIT企業「株式会社MARUKU」。熊本県八代市・芦北町・水上村とビジネス包括連携協定を締結し、IT事業で培ったノウハウを活かした地方創生に取り組んでいます。

  • 小山代表・甲斐さん・有川さん・小松さん

WEB TATE(IT企業)

東京のIT企業「株式会社WEB TATE」。MARUKUと共に、熊本県芦北町で立地協定を締結し、計石の廃校を活用したサテライトオフィスでICTビジネスを活用した地方創生に力を注いでいます。

  • 南代表・津浪・長澤(筆者)

Chakkathonのスケジュール

2日間からなるChakkathonは、1日目に各グループでディスカッション、2日目にプレゼンテーションが行われます。

【1日目】

  1. 開会の挨拶とChakkathon主旨の説明
  2. 村役場による水上村の現状・課題などの情報提供
  3. ディスカッションのテーマの方向性について説明
  4. 各グループでのブレインワーク
  5. グループワーク・ディスカッション

【2日目】

  1. 各グループによるプレゼンテーション
  2. アイデアの精査・ディスカッション
  3. 施策の優先順位決め・課題の洗い出し
  4. プロジェクトオーナーの選定
  5. 実現までの目安となるプロセス・フロー決定

限られた時間の中で水上村の将来を変えるアイデアに着火し、実現可能なネクストアクションに向けて落とし込むことを目的としたChakkathon。

Chakkathon1日目|グループワークの様子

短く長いこの2日間で、水上村の未来に新たな光が差し込もうとしています。

水上村で企業誘致は成功するのか?

「水上村の本当の魅力は足を運んでこそわかるもの。」

一面に広がる緑の山林と球磨川から溢れ出すマイナスイオン。澄み切った空気を吸い込んだ瞬間から、筆者はこの大自然に囲まれた水上村に心を惹かれていきました。

遠すぎる、田舎すぎる、Wi-Fiもない水上村で企業誘致を成功させるべく、地元の役場や企業が手を取り合い、今まさに大きな一歩を踏み出しました。

この壮大なプロジェクトの先に待っている未来はまだ誰も知りません。

水上村Chakkathonで着火したアイデアがどのようにプロジェクト化していくのか、筆者はこのプロジェクトを追い続け、その全てを定期的に発信していきます。

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