九州は熊本の東南端に位置する球磨郡水上村。
最上川、富士川と並ぶ日本三大急流の一つ球磨川の水源が存在しています。
水上村のシンボル的存在、標高1721mの市房山をはじめ、自然に囲まれた癒やしの里です。
そんな水上村も、人口減少や若年層の人口流出といった課題を抱えています。
その問題を解決するため、移住・定住をはじめ、若者の雇用創出など、新たな人の流れを生み出すプロジェクトが動き出しました。
今回は、このプロジェクトの一環として行われた「熊本県水上村・事業アイデアをカタチにする4泊5日のアイディアソン」の様子を紹介します。
参加者同士で村の新たな可能性を探る「熊本県水上村・事業アイデアをカタチにする4泊5日のアイディアソン」。
2024年1月30日に参加していたのは、さまざまな地域から集まった、業種も年代も異なる5人。
同日前半に行われた水上村視察ツアーの様子は以下からご覧いただけます。
人口1985人の村でチャレンジしてみないか!? 熊本県水上村・事業アイデアをカタチにする4泊5日のアイディアソン【Vol.1】前編
水上村の新スポットやサテライトオフィスを巡るツアーへご案内(後編)
水上村の新スポットや市房山などを一通り見て回ったご一行。
楽しみにしていたのは、「球磨焼酎」を生産している地元酒蔵での見学です。
2グループに分かれて、松下醸造場と大石酒造場をそれぞれ訪れました。
球磨焼酎とは、世界貿易機関(WTO)により産地呼称が認められた本格焼酎ブランドの一つ。人吉球磨の米を主原料とし、地元の地下水を仕込み水に用いて作られています。
ちなみに「松下醸造場」は現存する球磨焼酎の27蔵の中で最も古いとされるとか。
そのほかコワーキングスペースや春には桜の名所となる市房ダム、物産館「水の上の市場」なども回りました。
水上村をもっと身近に! 地元住民や参加者との交流会
当プロジェクトでは、自治体や地域住民と地元のおいしい食事、お酒を囲んでの交流会も用意してあります。
今回は、皆さんが宿泊していた「MIZUKAMISO」で開かれました。
村の新しい取り組みを見聞きしながら、自然や人々に触れた一日。
参加者にそれぞれの感想を尋ねました。
◎小林卓調さん
「アスリートに特化した村という印象を受け、熊本県民の健康オアシスと位置づけたアプローチができたらいいのではと思いました。例えば透析患者予備軍を対象とした高地トレーニングなどができれば、県北からも足を運ぶ人が多いのでは」
◎真柄沙耶香さん
「私は実際に移住を考えているので、食と住が整っていないと行きづらいなと正直感じました。お店のリアルタイムの情報を村民自身が更新できるように、Google MAPの使い方講座を開くなど、これからできることはいろいろありそうですね」
◎小野芳章さん
「アスリートに対して村がアプローチしていることが伝わってきました。一般の人が来た時のサービスが充実すれば、より活性化につながりそうです」
◎古閑泰俊さん
「アスリート以外にも一般の人を呼び込むためにも村の魅力を発信できる人材の育成が必要と感じました。森林セラピーもあるので、アスリートはもちろん、もっと間口を広げて、健康を目指せる場所としての位置づけができるといいですね」
翌々日の2月1日にはこれらの意見をさらにブラッシュアップ。実際に水上村で暮らし、自然に触れ、どんなアイデアが集まったのでしょうか。
次のチャプタでご紹介します。
水上村に新しい風を! 意見交換会
2月1日、水上村に滞在している4人に、前の週に村を訪れていた浅野波留奈さんと光藤直美さん、水上村役場の地域創生推進課・椎葉真珠美さん、運営スタッフの株式会社MARUKUの松井海香さんも加わり、意見交換を行いました。
水上村の魅力について、一同声をそろえるのが「アスリートにとって魅力的な環境・設備が整っていること」。
一方で、アスリート=陸上と位置付けられており、他のスポーツ分野へのアプローチができていないといった悩みも抱えているようです。
「口コミで広まり、さらに調べる時に頼るのはネットの情報。調べて情報が載っていないと、そこで情報収集が途切れてしまう可能性も。その動線を整える必要がありそうですね」(MARUKU松井さん)
「また、箱根駅伝に出場するようなアスリートの卵がたくさん水上村へ足を運んでいることも発信できていません」と振り返る水上村役場の椎葉さん。
「持久力がアップするといった高地トレーニングのメリットや水上村を訪れる際の準備物など、実用的な情報も発信していくことが大事ですね」と浅野さんも続けます。
また、「アスリート以外の人々へのアプローチ」についても話題に上りました。
「もっと活用できるのに、アスリート特化型では『もったいない』が第一印象」と話すのは小林卓調さん。
アスリートが来ない閑散期を利用して、「高地トレーニング、歩行プール、森林セラピー、温泉など水上村の資源を組み合わせた健康増進プログラムを開発しては」とアイデアを寄せました。
小野さんも「家族向け、IT業者向け、移住者向けなど、対象者を絞ったイベントも積極的に行っていくと、水上村の周知につながりそうですね」とアスリート以外に向けたアプローチについて話します。
会場となったサテライトオフィスは、2023年5月に完成したばかり。
その使い心地や今後の活用法についても意見を交換しました。
「利用があることが大前提ですが、管理人が必要と感じました。電源をリモートでコントロールできるようにするなど、持続可能な方法をいろいろ検討できそうですね」(古閑さん)
他にも、それぞれの視点で率直な意見が交わされ、今後のサテライトオフィスの運営の手掛かりとなったようでした。
アスリートだけでなく、健康をテーマにした一般向けのアプローチの検討や情報発信の必要性などについて話し合われた当プロジェクト。参加者の声が今後どう生かされていくか、展開が楽しみです。