人口1985人(2023年9月)、2040年には1395人とさらなる人口減少が予想されている熊本県の東南端、宮崎との県境に位置する熊本県球磨郡水上村。
一方で、高機能なトレーニング設備を備えた生涯スポーツ施設やサテライトオフィスの新設、23年にはスポーツビジネス企業との連携協定を締結が決定するなど、新たな挑戦も行っている画期的な村です。
「熊本県水上村・事業アイデアをカタチにする4泊5日のアイディアソン」は、さまざまな業種・年代の人々が実際に水上村に滞在して、参加者同士で語り合い、村の新たな可能性を探るプロジェクトです。
アイディアソンとは、思いついた考えや提案=アイデアとマラソンを掛け合わせた造語。短期間で多くのアイデアを生み出すためのイベントやワークショップのことと定義されています。
人口減少や若年層の流出などの社会課題を背景に、まずは、水上村のことを知ってもらい、ゆるやかに村の人々とつながってほしいと、全国規模で新たな事業に挑戦したい学生、社会人を募集。東京都や山梨県など、さまざまな地域から、業種も年代も異なる9人が本プロジェクトに応募し、参加しました。
水上村では、すでに「お試しサテライトオフィス」も実施しています。その誕生秘話や始動してからの歩みは、以下の記事でご紹介しています。
【水上村チャッカソン Vol.1】地方で企業誘致を目指す一大プロジェクト始動
【水上村チャッカソン Vol.2】地方での企業誘致成功に繋がる鍵とは?水上村アイデアソンに密着
【水上村チャッカソン Vol.3】水上村の未来を変える!!地方創生の実現に向けたアイデアと施策
日常の仕事を進めながら水上村の自然に浸る|水上村視察ツアーによる企業誘致施策【Vol.11】
筆者は、24年1月30日~31日に同行し密着取材。同期間に参加していた5人の滞在の様子を紹介します。
アイディアソン参加者紹介
今回、取材同行時に参加していたのは年代も住む地域もさまざまな5人の皆さん。
参加動機について話を聞きました。(順不同)
「熊本への移住を希望。阿蘇の方で住まいを探していましたが、水上村のことも知り、市房山での森林セラピーなどに興味を持ち、参加しました」
卓調さん「移住に興味があります。水上村はスポーツ関係の施設が整っていて、ダイエットにも使えるのでは。そういった事業を展開できれば村への集客につながるのではと考えています。パートナーは温泉を楽しみにしています」
「普段は、訪日外国人向けに田舎のツアーを行っています。水上村の近くの椎葉村や五家荘にはよく訪れていましたが、度重なる自然災害によって、九州山地の峠越えが難しくなっている現状。南に下ってもっと球磨地方をリサーチしたいと参加しました」
「日頃は地方の企業の経営を支援しています。地方創生に関する活動も積極的に取り組みたいと、応募しました。興味を持ったポイントはスポーツ企業との連携や6次産業化に村が積極的に取り組んでいるところ。物づくりの仕事にも関わっているので、そういったスキルが役立てばと考えています」
水上村の新スポットやサテライトオフィスを巡るツアーへご案内
参加した皆さんを水上村の自然や、ニュースポットを巡るツアーへご案内。
まずは2022年にオープンしたトレーニングジム「SAKURA VILLAGE」へ足を運びました。
水上村民の健康寿命を伸ばすことを目的として建てられた公共施設。
施設では高機能のトレーニングマシーンをはじめ、長さ25mの歩行用温泉プールや高・低酸素ルームも完備してあります。
村外在住の人々も200円~とリーズナブルな価格で利用できるのがうれしいポイント。また、村民でなくても宿泊している期間は、村民価格で使えるそうです。
続いて、水上村のシンボル的存在の市房山の登山口周辺へ。
麓にはキャンプ場が2023年に一部リニューアルオープンしたばかり。快適生活研究家・田中ケンさん監修のキャンプ場でフリーサイト(3000円)や電源付きオートサイト(5000円)などで、水上村の大自然に触れながらのんびり過ごせます。
キャンプ用品一式が借りられる「手ぶらセット」(4人用1万円)をはじめ、レンタル品も充実しているので、初心者でも安心して利用できます。24年度春にはコテージなどの完成も予定しています。
この日は定休日で撮影ができませんでしたが、広々とした芝生が心地よいキャンプ場です。
「家族はもちろん、犬と一緒に泊れるキャンプ場のスペースやドッグランもあって驚きました」と小林さん夫妻。
キャンプ場を見学した後は、市房山の登山口へ。
市房山は熊本でも2番目に高い標高1721mの山。
豪雨災害によって、入山規制(2024年2月時点)があるため、登山口から山を眺めました。
山には幹周り3m以上もの巨大な杉が約40株も登山道に立ち並び、中でも幹回り6m以上のものは「市房杉」と呼ばれています。
村の職員が「市房杉は、大人が7~8人くらい手をつなげるくらい大きな幹回りです。森林セラピーとして、利用する方も多いんですよ」と説明すると、皆さんは「いつか体験してみたい」と口をそろえます。
山を見学した後は、2023年に148年の歴史に幕を下ろした湯山小学校も見学しました。
廃校の利活用も検討されている場所。村民が体を動かせる場所として体育館を開放するほか、会議などの集会所として利用されています。今後は短距離走のトラックや、避難所としての機能を失わないよう、またアスリートの合宿所として利用できるように宿泊施設などへの改修も予定されています。
「小学校前にトラックを作るなんて驚きです。村全体がアスリートに向けた取り組みを行っている印象を受けました」と小野さん。
水上村には、標高1000mの場所に最長2kmのクロスカントリーや300mのトラックなどを備えたトレーニング施設「水上スカイヴィレッジ」もあり、相互作用も今後期待できそうです。
ツアーでは、村のコワーキングスペースや酒造見学、交流会なども行われました。
その様子は後編へ。