水上村チャッカソン

【水上村チャッカソン Vol.3】水上村の未来を変える!!地方創生の実現に向けたアイデアと施策

霊峰市房山に美しく生い茂る木々、球磨川を流れる透きとおった清らかな原水。

大自然に囲まれたのどかな熊本県球磨郡の”水上村”で、企業誘致を実現させるという壮大なプロジェクトが進められています。

村民にとっては何もないありふれた山村。

しかし、何もないことが時に強みとなります。

村役場、観光協会、IT企業など、多種多様な属性の人が水上村に集まり開催された「水上村Chakkathon〜アイデアソン〜」で、一体どのようなアイデアが誕生したのか?

筆者は、地方創生・新プロジェクト始動の記念すべき瞬間に立ち会いました。

水上村Chakkathon|地方創生の成功に繋がるアイデアが誕生

2020年10月、2日間にわたり水上村の石倉交流施設で「水上村Chakkathon〜アイデアソン〜」が開催されました。

石倉交流施設|水上村

緑豊かな自然に恵まれたこの水上村に「まず足を運んでもらうために、どのような施策が必要なのか?」というテーマに沿ってアイデアを出し合い、アイデアの具現化、そしてネクストアクションまで落とし込むのが、”Chakkathon”の目的となります。

“山しかない”、”森しかない”、熊本県の隠れ里・水上村で企業誘致を実現させ、地方創生の成功モデルになるという最終ゴールに向け、Chakkathon2日目は水上村村長を迎えて全3グループのプレゼンテーションが行われました。

水上村で”ととのう”/Totonow

「水上村は、”仕事”、”生活”、”自分”を整えられる場所であり、何もないということに”価値”がある。」(今富さん)

最初にプレゼンを行ったのが、水上スカイヴィレッジを管理する「トラックセッション」の今富さんらが属するグループCです。

  • 【トラックセッション】今富さん
  • 【水上村役場・産業振興課】田代主幹
  • 【水上村役場・総務課】那須(恵)さん
  • 【教育委員会・教育課】岩﨑さん
  • 【MARUKU】甲斐さん、小松さん
  • 【WEB TATE】津浪

※上記の所属部署は2020年10月時点ものとなります。

「IT企業を企業誘致のターゲットにした場合、Wi-Fiインフラ整備は前提になる。その上で、水上村に興味を持ってもらうための”フック”が必要になる。」(今富さん)

グループBのプレゼンをする今富さん(一般社団法人トラックセッション)

グループCは「水上村で”ととのう”/Totonow」というキャッチコピーを掲げ、「天空のサウナ」「空き地・空き家の活用」という2つのアイデアを発表しました。

天空のサウナ

1つの目アイデアが、水上村の象徴の一つでもある標高1,000mに位置する”スカイヴィレッジ”の圧巻の景観を活かしたサウナを作るというものです。

水上スカイヴィレッジ|全天候型グラウンド

「美しい市房山を眺望しながらサウナで疲労回復促進、ストレス発散効果を得られる。」(今富さん)

想像しただけで夢が膨らむこのアイデアは、水上村で人として”整う/Totonow”ホットなトレンドを狙えると今富さんは話しました。

「スカイヴィレッジには川から直接引いた水を使ったアイシングプールが設置されていて、キンキンに冷えた水でアスリートの脚を癒やすことができる。このアイシングプールは天空のサウナにも活用できる。」(今富さん)

有名アスリートも利用するスカイヴィレッジ。新たな癒やしスポットが誕生すれば、観光客誘致、企業誘致に繋がる大きな武器となります。

ホットなトレンドを水上村へ

「多くのテレビ番組や情報系のWebサイトが、サウナをホットなトレンドとして取り上げている。熊本市は”サウナの聖地”として知名度を上げていて、東京からわざわざ足を運ぶ人がいるほどの人気を見せている。」(今富さん)

今富さんが天空のサウナについて語る。

水上村も熊本市のようにサウナの聖地となれる可能性があり、ワークとバケーションを組み合わせた”ワーケーション”のモデルにも適していると今富さんは話しました。

「IT企業家は今ワーケーションを求めている。天空のサウナは水上村でしかできない”非日常的体験”であり、良い環境が整っている。」(今富さん)

〜ホットなトレンドを水上村へ〜

アスリートの聖地であるスカイヴィレッジのイメージチェンジは、トラックセッション代表の村上さんも課題として挙げていました。

この天空のサウナが実現すれば、スカイヴィレッジが全国により認知され、観光客誘致に大きく貢献できることは間違いありません。

空き地・空き家の活用

「水上村は、空き地・空き家があるにも関わらず上手く活用できていない現状がある。」(今富さん)

水上村役場も課題に挙げて取り組んでいる空き地・空き家にフォーカスした2つの目のアイデアが発表されました。

水上村には、ある理由で貸されていない空き地・空き家が多く存在するそうです。

有効活用できそうな水上村の空き家

「”片付けができない”、”仏様がいる”という理由から、家主が貸してくれないケースが多い。」(今富さん)

グループCは、実際に使われていない空き家を見て「これは活用できる」という結論に至ったそうです。

「水上村の協力を得て空き地・空き家を活用できるようになれば、天空のサウナのフックに引っ掛かった企業に対して提供することもできる。改修するための補助金が下りれば、より企業が村に参入しやすい環境をつくれる。」と今富さんは話しました。

5年間の実装計画で進める

最後に、2つのアイデアの具現化に向けた計画について説明がありました。

5年間の実装計画を説明する今富さん(一般社団法人トラックセッション)

【2020年後半】サウナ構想・空き家調査・スカイヴィレッジ道路拡張工事・スカイヴィレッジのPR
【2021年前半】サウナ実装計画・空き家の活用構想
【2022年前半】スカイヴィレッジ道路拡張工事完了
【2022年後半】サウナ実装完了・空き家の活用開始・空き家の利用活用のPR

「5年間の実装計画を想定している。まずは空き地と空き家の調査を進め、並行して天空のサウナの構想を固める。そして2022年にはサウナの実装を終わらせて、空き地・空き家の活用も併せて進めていきたい。」(今富さん)

2025年に向けた実装計画の中で「スカイヴィレッジにサウナを作ります」というPRも行い、観光客流入、宿泊者の増加を同時に狙っていくこのグループC発案のプロジェクト。

筆者も実際にスカイヴィレッジに足を運び、トラックから眺望できる美しい市房山の姿に言葉を失うほどの衝撃を受けました。

水上スカイヴィレッジ|夏場でも涼しい風が吹き渡る

天空のサウナという水上村のパワースポットの誕生を想像するだけで胸が震えます。

GOTOど田舎不便なオフィス〜トンボとwifi飛んでます〜

「少子高齢化問題は深刻なものであり、企業誘致は至上命題である」

続いて、水上村観光協会の郷さんらが属するグループBのプレゼンが行われました。

  • 【水上村観光協会】郷さん
  • 【水上村役場・総務課】椎葉さん
  • 【教育委員会・教育課】那須主幹
  • 【産業振興課】江崎参事
  • 【MARUKU】有川さん
  • 【WEB TATE】南代表

※上記の所属部署は2020年10月時点ものとなります。

「水上村はITインフラ整備に弱点を抱えている。IT企業に限らず、企業誘致の実現にはフリーWi-Fiが必要不可欠。」(郷さん)

郷さんの説明に合わせてスクリーン大きくに表示されたのは、水上村の弱点となるITインフラ整備にフォーカスした、ユニークな自虐風キャッチコピーでした。

グループBのキャッチフレーズを発表する郷さん(水上村観光協会)

GOTOど田舎不便なオフィス〜トンボとwifi飛んでます〜

このキャッチコピーは産業振興課の江崎さんによって発案されたもので、今話題のGOTOに引っ掛けて何かしらの”お得感”を連想させることが狙いとされています。

「敢えてとんがったメッセージを発信することで、都会で働くIT企業家に刺さるのではないか?」(郷さん)

遠すぎる、山里の水上村にIT企業をどうやって誘致するのか?

グループBからは「おためしサテライトオフィス」「5Gインフラ整備」という2つのアイデアが発表されました。

おためしサテライトオフィス

「一度足を運んで、水上村の空気をいっぱい吸い込んでみてください」

1つ目のアイデア「お試しサテライトオフィス」の概要を説明する郷さん

水上村には本当の空気と水があります。これを存分に味わってもらい、企業誘致に繋げる「お試しサテライトオフィス」という案がグループBの1つ目のアイデアとして発表されました。

「コンクリートジャングルに囲まれている都市部の皆さんに、“サテライトオフィス”を提供して大自然の中で仕事をしていただきたい。まずは先着5社最大10名まで、2泊3日の水上村視察ツアーを無料で提供する。」(郷さん)

日本全国でワーケーションや働き方改革が進められる中で、水上村の環境を活かしたおためしサテライトオフィスの具体的なプランが郷さんから説明されました。

〜【DAY1】企業が水上村を学ぶ、知る〜

「初日は昼過ぎに入村していただき、企業と自治体で意見交換ができるディスカッションの場を設ける。ここで企業からの水上村の制度・補助金などの質問に対する回答をすぐに行うことができる。」(郷さん)

このプランを提供する上で、スタートアップする企業に対して「イニシャルコストを無料にする」など、起業までのハードルを下げるサポートが必要だと郷さんは話しました。

「ただ支援を行うだけではなく、最低雇用人数や最低勤務年数といった条件を提示することで、企業の本気度をうかがうことができる。企業側から水上村へのアイデアや解決策がダイレクトに伝わるため、大きな使命感も生み出すことができる。」(郷さん)

このプランにおいて、夜の会食などで村と企業の距離をしっかり縮めて、絆を深めることも非常に重要であると説明されました。

水上村では旬な山の幸を使った料理やジビエ料理を堪能できる

〜【DAY2】全力で水上村を楽しむ〜

「2日目はアクティビティを中心とした体験プランになる。企業の方に水上村の魅力を肌で体感してもらいたい。」(郷さん)

1日目の堅いイメージとは打って変わり、2日目は水上村のプロが楽しみ方を伝授しながら移住するだけではなく”遊び場”としての価値に気づいてもらい、子供がいる暮らしのイメージをしっかりもってもらうことが理想的だと郷さんは話しました。

水上村岩野の川遊びスポット|スリリング川遊びを楽しめる

「村民なら当たり前にできる魚釣りも、都会ではなかなか体験できないため子供が大喜びする。水上村の自然を全面的に押し出して、水上村で仕事をするイメージを持っていただきたい。」(郷さん)

2日目のプランでは、「休日の子供の笑顔をイメージしてもらえるか、水上村の制度や補助にメリットを感じてもらえるか」が重要視され、お土産を持って帰ってもらい帰宅後に家族の話題となることで水上村を強く印象づけさせる狙いもあります。

〜【DAY3】水上村で仕事をする〜

3日目は水上村を舞台とした「疑似ワーク」が行われます。

「水上村に住んで仕事をしていただくイメージをしっかり持ってもらう。」(郷さん)

大自然に恵まれた水上村で仕事をしてもらい、企業の方に「水上村に貢献したい」という気持ちを芽生えさせることが狙いとなります。

IT企業を誘致することで、IT関係の勉強会を開ける、Uターンの受け皿にもなれるなどのメリットも生まれ、水上村の課題とされる雇用問題解決に貢献できることが説明されました。

水上村には公衆無線LANやWi-Fiがないため、”ITインフラ整備”は必要不可欠となります。

この問題を解決しつつ企業誘致に繋げる2つ目のアイデアが、MARUKUの有川さんより発表されました。

5Gインフラ整備

「水上村は想像以上に遠く、物流が関わる企業の誘致は現実的に難しい。だからこそ、体ひとつで動き回れるIT企業が誘致の第一候補となる。」(有川さん)

2つの目のアイデアを発表した有川さん(株式会社MARUKU)

地方創生に力を注ぐIT企業”MARUKU”の有川さんは、コロナ禍においてIT企業のリモートワークがスタンダードになり、オフィスを持たない企業が増えている現状について語りました。

水上村を舞台としたワーケーション

「フェイスtoフェイスのコミュニケーションがいかに大事なのかを痛感した。しかし、働く場所は東京ではなくどこでもいいことに気づいた。キックオフミーティングなど社員が集まるきっかけがある場合、都会ではなく自然があって釣りや温泉が楽しめる場所を求める人も多い。」(有川さん)

水上村の自然を活かしたワーケーションは企業誘致を成功させる鍵となり、全3グループが着目しています。

「水上村という企業誘致に積極的で、自然豊かで温泉もあって、起業支援も充実してる町があるらしいぞ!早速視察に行ってみよう!という考えが生まれる。しかし、その時に初めてネットが繋がらないという問題が立ちはだかる。」(有川さん)

水上村湯山温泉|女性に大人気の美人の湯

水上村はITインフラ整備が弱いという弱点を抱えていますが、この問題の解決策となり、将来の企業誘致に繋がる2つ目のアイデアがグループBより発表されました。

「人口2,126人の山村が世界を驚かせる!5Gインフラ整備の完了!」

熊本県球磨郡にある”山しかない”、”森しかない”水上村が、世界に衝撃を与える施策が有川さんから説明されました。

「『人口2,126人の山村が世界を驚かせる!5Gインフラ整備の完了!』いうビッグニュースは絶対にバズり、ITっ子の中で必ず話題になる。」(有川さん)

スクリーンに映し出されたグループBの2つ目のアイデア

村民にとっては何もない水上村に、5Gインフラ整備がされることは、IT企業どころか世界に衝撃を与えることは間違いありません。

「5Gインフラ整備によって、2泊3日の視察ツアーの関心度も高まる。」(有川さん)

WEB TATEの南代表が、熊本県の芦北町の視察ツアーに参加した際、帆船の船首で独りタイタニックを体験し「ここに起業しよう!」と大きく心を動かされたエピソードも紹介されました。

企業誘致を成功させるためには「まず一回来てもらわないと何も始まらない。遠すぎる水上村に来てもらった際は”起爆剤”が必要となり、それが”5Gインフラ整備”である。」(有川さん)

5Gは人を動かすほどの大きな力があり、今だからこそ有効な起爆剤であり、水上村に来てもらうためのきっかけになると有川さんは話しました。

水上村に5GはToo muchだと思いますか?

「水上村に5GはToo muchだと思いますか?いいえ、過疎化に悩む地域こそ、親和性が高いんです。」(有川さん)

有川さんが水上村と5Gの親和性について語る

水上村は緩やかなカーブを描いた人口減少が続き、2060年には950人を下回ることが予想されています。その中で、5Gが人的リソース不足の解決策になると有川さんは語りました。

「モノのインターネットと呼ばれる”IoT”はこれからさらに普及する。5Gによってタイムラグがなくなることでオンライン診療にも対応できるようになる。例えば、水上で心臓の治療を行う場合、5Gがあることで現在ブラジルにいる名医の手術を受けることもできる。」(有川さん)

スマート農業やドローンを用いた物資の配達などにも5Gは活用され、地方の過疎地だからこそ親和性が高いということが説明されました。

スマート農業|ロボット技術やICTを活用した国が推進する農業

水上村に実際に訪れてもらい、現地の魅力を体感して実際に仕事もしてもらう2日3泊の「おためしサテライトオフィス」、そして世界に衝撃が走るであろう「5Gインフラ整備」という2つのアイデア。

水上村の知名度を一気に上げることができるグループBによる「GOTOど田舎不便なオフィス・トンボとwifi飛んでます」が、村長や自治体の方々にどう響くのか注目が集まります。

どうにでもしてくれ!水上村!〜2030年に目を向けた実証実験の村づくり〜

最後にプレゼンを行ったのが、トラックセッション代表の村上さんらが属するグループAです。

  • 【トラックセッション】村上代表
  • 【水上村役場・産業振興課】川俣課長
  • 【地域おこし協力隊】木村さん
  • 【MARUKU】小山代表
  • 【WEB TATE】長澤(筆者)

※上記の所属部署は2020年10月時点ものとなります。

今回の「水上村Chakkathon〜アイデアソン〜」で、筆者はこのグループAのディスカッションを密着取材しました。その様子はこちらの記事でご覧いただけます。

まず始めに、MARUKU代表の小山さんからグループAが発案したアイデアのキャッチフレーズが発表されました。

グループAのプレゼンをする小山さん(株式会社MARUKU)

どうにでもしてくれ!水上村!〜2030年に目を向けた実証実験の村づくり〜

“どうにでもしてくれ”、という自虐に振り切ったパワーワードから、参加者や村長は一体何を想像したでしょうか?

「これは投げやりな言葉ではなく、手を取り合ってネガティブな環境をポジティブな環境にしてくれるような企業誘致を目指すもの。2030年に目を向けた実証実験の村づくりをしていく」(小山さん)

大自然に恵まれながらも”○○しかない”、という水上村のネガティブだった部分をポジティブに転換し、企業誘致に繋げるアイデアが発表されました。

水上村と企業をマッチングさせる

実証実験がしたい企業と水上村の環境をマッチングさせていく。」(小山さん)

実証実験の村づくりを発案したグループAのメンバー

グループAがテーマに掲げた村と企業のマッチングは、ワーケーションを通して企業の方に現地理解を深めてもらう狙いがあります。

「まずは中期滞在のワーケーションで企業に課題を見つけてもらい、事業化に向けたタッチポイントをつくっていく。水上村は『どうにでもしてくれ!好きなように実証実験してくれ!』というサポートに全面協力する姿勢を向けて、村づくりを進めていく。」(小山さん)

大自然に恵まれた村全体を活用して実証実験の村づくりを目指していくというアイデア。見渡す限りの山林や畑は、企業にとっては重要な資源であり、まさに「実証実験してくれ!」という環境下にあります。

晴天の水上村|のどかな風景が広がる

「水上村は実証実験にはちょうど良い環境が整っている。山、森しかないというネガティブな部分が、企業目線では実証実験に使える土地がたくさんあるというポジティブなものになる。」(小山さん)

ネガティブをポジティブにするのは企業であり、企業に”築き”を与える取り組みであると説明されました。

対等なコミュニケーションを図る

「”企業に来ていただく”ではなく、あくまで対等な関係でコミュニケーションを図ることが必要になってくる。水上村と企業がお互いにWin-Winの関係になることが大事。」と小山さんは話しました。

この施策は実証実験をしたい企業がターゲットとなり、具体的なアプローチ方法が説明されました。

Webサイトや動画でアプローチする

「どうにでもしてくれ!水上村!」というパワーワードが看板となったこの施策は、Webサイトや動画で効果的なPRを行うと説明されました。

「村に整っている環境でどんな実証実験ができるのかをまずは知ってもらうことから始めていく。」(小山さん)

地方での取り組みが多くの企業に認知された例として、非常にインパクトが強い「別府市の鬼割プラン」のWebサイトが挙げられました。ネット上で割引クーポンが購入できる鬼割プランは売り切れ続出となっています。

Webサイトを使ったプロモーションについて語る小山さん

エッジの効いたWebサイトは話題性を広げて、大きく拡散されていく。拡散された情報のリンクとして水上村のポータルサイトである”Feel Mizukami”に流していく。」(小山さん)

Feel Mizukamiは水上村の魅力が全部詰まったポータルサイト。しかし、現在のサイトの入り口は情報量が多く、特定のメッセージを押し出しづらいという問題があるため改善が必要と話しました。

「Feel Mizukamiの入り口で”実証実験の村づくり”というメッセージを押し出す。そうすることでポータルサイトを見てもらえるようになり、水上村に実際に住んで働くというイメージを持たせることができる。」(小山さん。)

Feel Mizukami(水上村ポータルサイト)

「実証実験に積極的な村である」という認知を広めるためには、Webサイトを活用した効果的なPRが重要であり、さらに企業に刺さるインパクトが必要であると小山さんは話しました。

実証実験のイメージ

実際に水上村で行う実証実験のイメージがいくつか挙げられました。

まずは、腕などに装着するコンピュータである”ウェアラブルデバイス”の開発。高齢者の見守り機能や心拍数を測る機能などを実装し、水上村で暮らす村民の生活に役立てるというものです。

ウェアラブルデバイス|装着・着用できるIoT機器やコンピューター

「実証実験は人口があまりにも多い場所は対象にならない。人口2,126人の水上村の高齢者率は、実証実験をしていく上ではちょうど良い。」(小山さん)

また、スマート農業、自動運転、お買い物代行なども実証実験の対象に適している説明されました。

「ICT化、IoT化をしていくようなモノが実証実験の対象になっていく。」(小山さん)

“◯◯しかない”水上村が実証実験を行いたい企業の心を動かすことができれば、将来の人口減少の歯止めとなり、安定した雇用の獲得にも繋がるという狙いもあります。

実証実験の村づくりの実現に向けたメッセージ

グループAに属する各メンバーがそれぞれの目線で実証実験の村づくりの実現に向けたこの施策について語りました。

村役場の産業振興課・課長の川俣さんは、村民が持つ農業や林業のノウハウが活かせることや国からの補助の可能性について触れました。

施策に必要な予算や可能性について語る川俣さん(産業振興課・課長)

「”どうにでもしてくれ”というメッセージは、企業の目を引くためインパクトが必要だということで決まったもの。この取り組みは『問い合わせから始まる企業誘致』である。また、村民が持つ農業や林業の知識は企業にないものであり、企業誘致に活かしていける。Wi-Fiインフラ設備は必要になるが、企業とのコラボとなれば総務省、農林水産省関係の補助が見込める。」(川俣さん)

続いて、地域おこし協力隊の木村さんは住民目線での意見を述べました。

村民目線で実証実験の村づくりに対する願望を述べた木村さん(地域おこし協力隊)

「私たちが当たり前だと思っている環境でも、企業が求めるものが水上村にはある。山間部にも民家があるため、遠隔農業など多様な実証実験を行うことができる。個人的に願っているのが、イノシシやシカなどの害獣対策となる機械開発。水上村は人口よりもイノシシやシカが多く生息しているため、村民も興味を持って喜んでくれる。」(木村さん)

最後に、水上スカイヴィレッジを管理するトラックセッション代表の村上さんが、実証実験の村づくりによって水上村が得られるものについて語りました。

水上村のネガティブな部分に企業が求めるものがあると話した村上さん(一般社団法人トラックセッション)

「”どうにでもしてくれ!水上村!”はかなりエッジの効いたキャッチコピー。私は水上村に来て3年間スポーツ事業やイベントに取り組んできたが、参加者は”山しかない”、”林道しかない”水上村にも興味を持ってくれた。水上村のネガティブな部分には企業が求めるものも存在する。人口減少、担い手不足、教育格差という問題の解決に繋がるような実証実験を行なってくれる企業を望んでいる。」(村上さん)

アイデアの具現化と地方創生に繋がるネクストアクション

こうして3グループによる「水上村にまず足を運んでもらうためのアイデアや具体的な施策案」が全て出揃いました。

【グループB】水上村で”ととのう”/Totonow

  • 天空のサウナ
  • 空き地と空き家の活用

【グループC】GOTOど田舎不便なオフィス〜トンボとwifi飛んでます〜

  • お試しサテライトオフィス
  • 5Gインフラ設備

【グループA】どうにでもしてくれ!水上村!〜2030年に目を向けた実証実験の村づくり〜

  • 村全体を使った実証実験の村づくり
  • エッジの効いたWebサイトや動画によるPR

村役場、観光協会、IT企業など多種多様な属性の人が集まって行われた”Chakkathon”を経て生まれたアイデアの数々。

これらのアイデアはただ提案しただけではなく、しっかり次のアクションに繋げて具現化していくことがこのプロジェクトの目的となります。

「一度でも水上村に足を運んでほしい。水上村の魅力を肌で体感してほしい。」

水上村の人口減少の歯止め、雇用問題の解決、出生率増加に繋がる「企業誘致」という大きなゴールに向け、各グループが提案したプロジェクトの舵を取る”プロジェクトオーナー”が選定された。

プロジェクトオーナー任命の様子を見守る水上村 中嶽村長(写真中央)

今後はプロジェクトオーナーが主体となり、進捗状況をメールやZOOMなどで共有していく流れとなりました。

「天空のサウナ」のプロジェクトオーナー

標高1,000mの陸上競技施設・水上スカイヴィレッジにサウナを設置し、新たな観光客の呼び込み、そして企業誘致を狙う天空のサウナは、岩﨑さんを中心とする村役場教育課がプロジェクトオーナーに任命されました。

「空き地・空き家の活用」のプロジェクトオーナー

水上村の空き地や空き家を活用し、「天空のサウナ」のフックに引っ掛かった企業に対して住居やサテライトオフィスとして提供するプロジェクトは、村役場総務課がプロジェクトオーナーに任命されました。

「おためしサテライトオフィス」のプロジェクトオーナー

2泊3日の水上村視察ツアーで村の魅力を肌で感じ、実際に現地で仕事を行なってもらう「おためしサテライトオフィス」は、村役場産業振興課がプロジェクトオーナーに任命されました。

「5Gインフラ整備」のプロジェクトオーナー

人口2,126人の山村に突然5Gインフラを整備し、世界を驚かせるビッグニュースを発信することでIT企業の誘致を狙うプロジェクトは、村役場総務課がプロジェクトオーナーに任命されました。

「実証実験の村づくり」のプロジェクトオーナー

水上村全体を実証実験の場として企業に提供し、村民と企業の新たなコミュニティ誕生と拡大を狙う「実証実験の村づくり」は、村役場産業振興課がプロジェクトオーナーに任命されました。

水上村Chakkathon参加者は何を感じた?

遂に本格始動する水上村の企業誘致プロジェクト。Chakkathon2日目のプレゼンには、水上村役場総務課の田代課長、水上村の中嶽村長も足を運んでいただきました。

参加したメンバーや水上村村長から、今回の水上村Chakkathonに対する感想やプロジェクトに対する期待や意見が述べられましたのでご紹介していきます。

「天空のサウナというキャッチコピーだけでも惹かれた」WEB TATE 南代表

天空のサウナに早速心を惹かれた南代表(WEB TATE)

「村民にとってはありふれた景観や環境でも、私にとっては本当に特別なものだった。サウナが大好きな私は、”天空のサウナ”というキャッチコピーだけでも心を惹かれて足を運びたくなった。」

「目線によっては不利なものも有利になる」産業振興課 川俣課長

これからの村づくりについて語る川俣さん

「”どうにでもなれ!水上村!”のようなエッジの効いたキャッチコピーは、本当は自分の口からは言えない言葉である。しかし、目線によっては不利なものも有利になる。これからの村づくりは前向きなものでなければならない。」

「村と企業のマッチングは行政の働きが鍵となる」産業振興課 田代主幹

施策の実現には行政の働きが鍵になると話した田代さん(産業振興課主幹)

「時々、頭が3つあればいいなと思うことがある。それは、固定概念がなくなり、このような素晴らしいアイデアが生まれる可能性があるからだ。水上村と企業をマッチングさせるには行政の働きが鍵となる。」

「財源の問題がクリアできれば実現できる」水上村役場総務課 田代課長

水上村の現在の取り組みや財源の問題について語った田代さん(水上村役場総務課・課長)

「現在、人口減少に歯止めをかけるための取り組みをしている。スカイヴィレッジと産業推進機構で地方創生を図りつつ、MARUKUと提携してポータルサイトも作った。施策の実現は予算を要するものであり、財源の捻出など煮詰めていく必要がある。空き家や5Gインフラ整備などの施策は、財源の問題がクリアできれば実現できる。」

「国からの補助金や通信会社3社の協力」水上村 中嶽村長

天空のサウナや5Gインフラ整備の実現の可能性について触れた中嶽村長

「水上は村面積の90%以上を森林が占める。”あるもの”を活かすことが大事。天空のサウナは宿泊場所の問題があり、空き家の活用を含めて水上全体で考えていくことになる。県内ではまだまだ5Gを拾える場所は少ないが、水上村だけの財力でインフラを整備することは難しい。国からの補助金や大手通信会社3社の協力が必要となるが、実は、毎年のように福岡の大手通信会社3社にインフラ整備をお願いしにいっている。」

水上村企業誘致・地方創生プロジェクトの展望

2020年10月、熊本県球磨郡の水上村で2日間にわたり開催された「水上村Chakkathon〜アイデアソン〜」の統括が、MARUKU代表の小山さんによって行われました。

Chakkathonを総括した小山さん

「とても価値ある時間だった。これらのアイデアの具現化は”プロセス”を大事にしていく。進められないものも中にはあるかもしれない。しかし、難しいという理由を可視化し、次のアイデアに繋げるという積み重ねが、”水上モデル”の形成に繋がる。水上村だけではなく、熊本県とも連携しながらしっかりプロジェクト化していく。」(小山さん)

“山しかない”、”森しかない”、でも”大自然という財産”があるこの水上村で、企業誘致を成功させることは地方創生の新たな道を切り開くことでもあります。

このプロジェクトは、成功が約束されたものではなくどこかで失敗するかもしれません。

筆者は、引き続きこの壮大なプロジェクトを追い、その全てを今後も包み隠さず発信していきます。

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